患者さんに頻繁に聞かれる「炭酸飲料を飲むと歯が溶けるって本当ですか?」という質問にお答えします。結論から言うと、炭酸飲料は確かに歯を溶かす可能性があります。
ただし、歯が溶けるというのは、長時間、歯そのものを炭酸飲料に4時間以上漬けた場合です。炭酸飲料は弱酸性であり、歯や骨の成分(リン酸カルシウムやリン酸マグネシウム)は酸に弱いため、長時間接触すると溶けることがあります。
実際には、飲み物が歯に接触する時間は短いため、唾液の作用で酸が中和されます。そのため、炭酸飲料を飲んだからといって、すぐに歯が溶けるわけではありません。
ただし、これを安心材料にして炭酸飲料を大量に飲むのは避けてください。
炭酸飲料の酸性よりも、ふくまれている糖分のほうが虫歯のリスクが高いです。虫歯の主な原因であるミュータンス菌は糖分をエサに繁殖します。炭酸飲料を飲んだ後は、水やお茶を飲んで口内を中和し、歯磨きをしっかり行うことが大切です。
日常生活での注意点もあります。例えば、お酢や炭酸飲料、柑橘類の果物、梅酒、栄養ドリンクなどの酸性食品や飲料を頻繁に摂取すると、口内が酸性状態になり、酸蝕歯のリスクが高まります。
酸蝕歯とは、酸によって歯の表面(エナメル質)が溶けたり、歯の先端が溶けて噛み合わせが悪くなったりする状態です。進行すると知覚過敏や歯のツヤがなくなり、黄ばみやすくなるなどの症状が現れます。
PHは酸性やアルカリ性の強さを示す指標で、数値が低いほど酸性、数値が高いほどアルカリ性です。丈夫な歯を維持するためには、飲み物のPHにも注意が必要です。
酸性が強い飲料(炭酸水、お酢、栄養ドリンクなど)を習慣的に摂取している方は、次のことを心がけてください。
炭酸飲料が好きな方も多いと思いますが、糖分には注意が必要です。健康のために摂取しているものが、実は歯に悪影響を及ぼしていることもあります。毎日摂取しているものに注意を払い、健康な歯を維持しましょう。
SHUNJI.MATSUDA